【書籍】 なぜ電磁気で地震の直前予知ができるか 早川正士
 【講演】 地球電磁気的方法による地震予測の現状と展望 上田誠也
      宇宙飛行ミッションについての最新報告 セルゲイ・アウデエフ
 【会合】 FM電波観測で捉えた地震関連異常に関する検討会
 【動画】 Voices Friedemann Freund | 地震予知研究の最前線 長尾年恭

NHESS - Special Issue

 Earthquake Precursory Phenomena
 Editor(s): M. E. Contadakis and P. F. Biagi
Nonlinear Dynamics of the Lithosphere and Earthquake Prediction

 Vladimir Keilis-Borok, Alexandre A. Soloviev (Editor)

* Nonlinear Dynamics of the Lithosphere and Earthquake Prediction (EoS)

研究と産業との接点 産総研の共同研究 ~若手共同研究者を囲んで~AIST Today 2003.12 VOL.3-12

吉川 今日はとても良いお話が聞けました。観念的に考えていたことが、皆さんの経験を聞かせてもらって分かったような気がします。製品化というのは幅広い意味がある訳で、形になるのはモノの形だけじゃないのですね。例えば産総研では「地震の研究」なんかもやっている。そこでよく議論するのですが「地震の予知」というのは製品じゃないかと言うんですね。地震がどうして起こるかという理論は製品ではないのですが、“もし今年、地震が起こるかもしれない”という予知ができれば、これは立派にある種の価値を社会にもたらします。それは立派な製品ということです。

12月22~24日:「地震国際フロンティア研究」最終報告会

* 参考:地震国際フロンティア研究グループ(理化学研究所)
* 関連:シンポジウム報告(日本地震学会ニュースレターVol.16 No.2)

* Special Issue on Earthquake Precursors (TAO, Vol.15 No.3, 2004)

12月17日:電磁気現象を用いた地震予知の可能性(防大タイムズ)

 電気通信大学電子工学科教授 早川 正士氏
12月15日:Announcement of opportunity - Call for scientific research proposals (CNES)

 来年打上げ予定のDEMETERの研究公募。締切は2004年5月1日。
12月9日:大気圏内VHF電磁波散乱体探査法(改良串田式)による地震予報の研究 (サイエンストピック@北大理学部)

観測方法の改良 私はこの方式で観測される現象に本質的な真実が隠されていると考えて、物理量が正確に観測されるように装置を考えました。測定しているのは電波の強度、電界強度です。そのために最新のディジタル同調のラジオを改造しました。FM放送は送られるシグナルの帯域が広いため、中間周波増幅回路の帯域は約0.3 MHzと広い帯域となるように設計されているので電界強度計として使うと混信します。また感度も1980年ごろのラジオほどは高くはありません。そこで、帯域を狭くすることと、感度を高くすることで実用可能にしました。
 0.1MHzずらす方式ではアンテナ入力振幅とレシオ検波出力振幅の関係は非線形です。出力はある電圧からクリップされて振幅が大きくなりません。このリミッター効果は振幅変動成分はノイズですからFM検波には都合のよい性質ですが電波強度を測定することには 使えません。電波の強度は振幅変動と同じなのでAM検波(整流、エンベロープ化)を行えばよいわけです。

Pilipenko, V., Shalimov, S., Uyeda, S., M.J.A. & Tanaka, H., 2001. Possible mechanism of the over-horizontal reception of FM radio waves during earthquake preparation period, Proc. Japan Acad., 77, 125-130

Abstract
いわゆる串田の方法で見出された地震前兆現象である見通し外FM放送局からの受信効果を電離層の現象ととらえて(串田らの主張)、「なぜ地球内部の現象が電離層へ及ぶのかlithosphere-atmosphere-ionosphere (LAIカップリング)」の疎過程について考えている(しかし、串田効果が電離層で起こっている現象かどうか疑わしいという観測もある)。

Source: 固体地球物理ゼミ(2003年11月27日)

Kushida, Y. and R. Kushida, On a possibility of earthquake forecast by radio observation in the VHF band, Journal of Physical Society of Japan, 19, 1998.

Abstract
 紹介する論文は全く経験的に,何の理論的な裏付けなしに地震発生とFM電波伝播異常との関係を論じた.著者らはもともと天文観測の相当経験を積んだ,彗星や超新星の発見は二人とも複数個持っている. ひたすら経験による観測から地震発生との経験式を導いている.私が注目したのは地震予測の実績であり,彼らの観測結果からより本質的な物理現象は何であるかを知りたいからである.もちろん大前提は地震発生には前兆となる物理現象が存在するということである.

Source: 固体地球物理ゼミ(2002年6月27日)
* 参考:森谷武男さんのページ
* 関連:ウェーヴレット解析を用いた地震に関連する大気擾乱の研究(東京学芸大学紀要4部門)

12月5日:Setellite Geophysics (IZMIRAN)

 Vulkanのページができてました。

12月4日:Progress, Promise in Space-based Earthquake Research (JPL)

* 関連:NASA cites progress in earthquake research (Spaceflightnow)

12月1日:日本災害情報学会 第1回災害情報勉強会

 テーマ 喫緊の課題とされる地震予知と災害情報
 講 師 阿部勝征東京大学地震研究所教授(日本災害情報学会理事)

12月1日:放送研究と調査(NHK放送文化研究所)

・マルチメディア時代の情報流通 南関東地震予測はどう流れたか 放送研究 平塚千尋
 9月中旬の地震予測情報を例にメディアエコロジーの一端を明らかにする。
 こう見てくると今や地震の予知・予測情報に慣れて、ある意味で鈍感になってきていると言えるのかもしれない。あるいは地震発生の確率がしばしば出されるため、地震の場合も降水確率予報のように確率的考えに馴染んできているのかもしれない。
 マスコミが取捨選択、評価・価値付けした、いわば編集した情報を、一方では売れ行き・視聴率を念頭に入れ市場論理に従って、ある意味では社会を視聴者・消費者を見ながら流したのに対し、インターネットその他で情報が流れる現在は、溢れる情報の中で市民自ら判断し対処しなければならない時代でもある。
 地震のグレー情報に対して、狼少年のように慣れてしまうのではなく、かと言ってパニックになるのでもなく、いわば不確実な情報、グレーの情報をそのまま受け入れる社会、許容する社会が生まれつつあるのかもしれない。企業のリスク管理の発想による情報対応行動もそれに一役買っていると言えよう。
 「備えあれば憂いなし」、ある意味ではこうした地道で柔軟な対応が社会の中に具現化しつつあるのかもしれない。それは災害情報を仮想のバーチャルなもの、つまり阪神大震災のように災害を日常世界からの断絶、非日常世界の突然の現出としてではなく、日常世界の延長線上に、そのバリエーションとする捉え方の芽生えを意味するものだろう。
 今回の南関東地震予測をめぐる情報流通と人々の対応は、地震の予知・予測に関して灰色を含めさまざまな情報が流れる現代のメディア環境の中で、新たな社会の断面を描き出したように見える。 (ひらつか ちひろ)
* 関連:地震予知情報と報道 ~東海地震グレー情報を考える~ 平塚千尋(年報第44集)

11月27日:総合科学技術会議 第15回宇宙開発利用専門調査会
 1つは、観測の立場から過去のデータの蓄積に基づいて予測・予知をすることが重要であると思う。世界の自然災害データを紹介する。
 1995 年から99 年までの5か年間で災害発生件数は世界で約1,200 件であり、その約40%はアジア地域である。被災者の数は10 億4,000 万人であり、アジア地域は90%である。亡くなった方は、16 万6,000 人であり、アジア地域が60%以上である。災害の被害額は約50 兆円である。
 災害の予知・予測ができて警戒を発令しても被害が全部無くなることはあり得ない。仮に被害額の1%を減らせるとして年間1,000 億であり、そのわずか5%ぐらい、もしくは1%でも5か年間投入すれば、かなり高度なシステムが構築でき、被害額が簡単に取り返せる。
 観測衛星あるいは情報収集衛星を各省庁でも使うことになり、かつ過去のデータの蓄積とともにサイエンスを入れて予知・予測が発展すれば、更にそれに伴う通信手段、ブロードバンドの衛星も必要になり、日本国内のみならずアジアに対して国際貢献ができることを、この専門調査会で検討して提言していただきたい。

11月26日:総合科学技術研究所談話会(東海大学)

 馬場 久紀助教授 電磁気学的地震予知における最近の成果

11月23日:予知目指し直接観測(高知)

 この長期観測計画は世界中から注目されている。「例えば水と地震の関係も注目されます。地震発生帯の破壊には水の動きが関係しているとの見方もあり、長期観測で水の動きをつかむことができれば、その関係も探ることができる」と末広理事。
 しかし、相手は自然。しかも、人類が初めて手を入れる領域だ。成果が出る保証はない。予想外の大発見があるかもしれないが、全く役に立たない恐れもある。要するに、やってみないと分からない。
 末広理事はこう力説する。「この取り組みが、地震予知はできるかどうかの大きな試金石になると思います」

* IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画(南海掘削)
* 地震・火山噴火・地滑りにともなう電磁場の変動と地下間隙水の運動との関係に関する研究(防災科学技術研究所年報 14)
11月20日:上田さんからのメール

各位:
以下がKeilis-Borok,& Peter Shebalinさんからの情報です。

"Vladimir Keilis-Borok" ,
"Peter Shebalin",

彼らの希望にしたがって、流します。転載自由です。

At 18:46 03/11/18 -0800, Vladimir Keilis-Borok wrote:
>Dear Seiya,
>
>Here is the brief communique about our advance prediction.
>All common friends urge to distribute it in media and
>among policy makers. Obviously Japan is the first place to do this.
>I attach the draft, please feel free to edit and change.
>Cheers,
>
>Volodya
>
>
>===============================================
>Vladimir Keilis-Borok, Professor-in-Residence
>Institute of Geophysics and Planetary Physics
>and Department of Earth and Space Science,
>University of California, Los Angeles
>3845 Slichter Hall, Box 951567
>UCLA, Los Angeles, California 90095-1567
>
>Office: 1813a Geology Building
>
>Telephones:
>(310) 206 56 67 (off),
>(310) 208 74 66 (home)
>(310) 709 76 10 (cell)
>Fax: (310) 206 3051
>
>vkb@ess.ucla.edu
>===============================================

11月19~21日:第32回電磁界理論シンポジウム(電磁界理論研究会)

EMT-03-90 宇宙プラズマ中の静電孤立波の電磁粒子シミュレーション
        大村善治,梅田隆行,松本 紘(京都大)
EMT-03-91 地震に伴う電離層擾乱の観測とその解釈
        早川正士(電通大)
EMT-03-92 地震に伴う電離層内での電磁気,プラズマ現象の衛星観測(レビュー)
        早川正士(電通大)
EMT-03-93 電離層探査衛星を用いた地震予知法
        宇都宮俊男(防衛大)
EMT-03-94 地殻活動に関連するULF帯の電磁場変動
        服部克巳(千葉大)

11月14日:地震予知「電波異常」全否定に疑問(日経産業)

 九月にFM電波の観測に基く地震予知情報が週刊誌にとりあげられ、的中したかしないかで話題になった。
 地震予知は毀誉褒貶の多い学問領域である。阪神大震災を予知できなかったことから、否定的な評価が学会に蔓延した。予知の研究に資金を当ずるのは税金の無駄遣いである、という認識までが国の機関に浸透した。
 理化学研究所でも「フロンティア研究」で予知研究プロジェクトを推進した。一流研究者による中間評価は肯定的だったが、この研究に否定的な学者とそれに同意する担当官庁の判断で期間延長が認められず、やむなく終結した。国のしかるべき研究機関で引き受けてもらえるよう努力したが、かなわずプロジェクトは解散した。
 私自身は地震学にはまったく素人だが、昔から大地震に伴う発光現象 が観測され、なんらかの前駆的な電磁現象が存在したとしても理由のないことではない。仮に予知の確率が十分の一としても、注意報としては意味があるだろうと考えている。
 今回の週刊誌情報で興味があったのは否定的な学者の意見である。そんなことはありえないと真っ向から否定する意見が多かった。ジャーナリズムの立場としても、だれの意見を聞くかで正反対の記事になる。だから新聞としては取り上げ方に迷うだろう。
 私はこの短いコラムでどちらが正しいと主張するつもりはないが、日本にとってこれだけ重要な問題で学者が確率論を根拠に100%否定するというのは、いささか異様な感じがする。「大陸移動説」にしても科学的根拠が明らかにされるまでは何十年間も無視され続けたのである。
 九月十二日に八ヶ岳のホテルで地震関係の電波異常に関する研究会が開催された。その呼びかけ人に有馬朗人元文部科学相が名を連ねていた。地震学者は有馬博士を”素人”というかも知れないが、私はこの勇気ある行為を尊敬する。
 おそらく今後もこの研究に国家予算を投じることには強い批判があるだろうが、民間基金を年間一億円投じることはできない相談だろうか。予知情報事業はベンチャーとしても十分成り立つはずである。(理化学研究所フロンティア研究システム長 丸山瑛一

* 参考:基礎研究所における研究評価(日本物理學會誌, 1991)
11月14日:地震国際フロンティア研究最終報告会の御案内

各位

 向寒の候、ますますご清栄のことお慶び申し上げます。
 来る12月22-24日、理化学研究所地震国際フロンティア研究計画(平成9年―13年度)の最終報告会および地震電磁気学研究発表/討論会を別紙のとおり催すことに致しましたのでご案内申し上げます。

 計画終了後、研究員の処遇、観測点の改廃・維持・他機関への移譲などのため心ならずもやや時日を経過いたしましたが、5年間の研究成果を総括し、問題点を洗いなおすべきと存ずる次第です。

 地震電磁気研究は、計画終了後も国内外でますます活発化し、わが国はなお世界の最先端を開拓しつつあります。私どもは厳しい環境ながら今後も研究継続/発展に全力をあげる所存です。最近では電磁気学的手法による地震予測の可能性が広い関心をよび始めていますこともあり、今回の会合は第1日目の理化学研究所地震国際フロンティア研究計画に引き続き、第2日には広く同計画以外の関係分野の研究者をも含めた多角的研究発表、第3日には地震予測研究における今後の地震電磁気学の役割についての集中的討論を計画いたしました。

 あまつさえ年末の慌しい折で誠に恐縮ですが、どうか万障お繰り合わせのうえ、ご来駕賜りますよう御願い申し上げます。

元地震国際フロンティア
グループディレクター
上田誠也

11月13日:光る研究室(日本工業新聞)

 電気通信大学電子工学科 早川正士教授(上)
 電気通信大学電子工学科 早川正士教授(下)

11月10日:衛星は地震を予測できる(北京科普之窓)

 我が国は「第九次五ヶ年計画」で、衛星による地震予知研究と応用を開始した。 当時、航天部第五研究院航天信息研究所は、衛星熱赤外画像を利用した地震短期予知研究を行い、予備的な成果が得られ、多くの経験が蓄積されており、衛星熱赤外線異常解析システムを構築、これは地震予知情報の他の情報と結びついた地震予知情報システムを形成する。
11月6日:Quake alert too dear for Tajiks (BBC)

Professor Negmatullayev's prediction method is based on "disturbed equilibrium of pressure and temperature functions... in the atmosphere" and effects higher up in the ionosphere, he says.
The ionospheric effects are said to be explained by "heating by electric fields whose occurrence is associated with the last stage of the preparations for the earthquake in the Earth's crust".

* 関連:Earthquake-spotters struggle to protect Tajikistan (Taipei Times)
* 参考:F-spread In The Ionospheric Seismic Activity Region During The Preparation of Earthquake (EGU, 2002)

10月31日:Signals from space enable earthquake detection (ESA)

 Ionospheric remote sensing of the Denali Earthquake Rayleigh surface waves (GRL)

* 参考:On the Possible Detection of Tsunamis by a Monitoring of the Ionosphere (JGR, 1976)
10月29日:第三回 先端電力座談会(先端電力研究会)

 竹内 伸直(秋田県立大学)

10月23日:避けられぬ大地震~明日を生き抜く為に~(奇跡体験!アンビリバボー)

 串田氏が、予測のはずれるリスクをあえておかして公開に踏み切った衝撃的な報告を受け、マスコミや専門家130人が集まって学術検討会議が開かれた。会議に参加し、電磁気異常による地震予知に精通する東海大学地震予知研究センターの長尾年恭教授は、串田氏の研究をこう語る。串田氏の研究は非常に新しいものであるが、まだ経験則によるものでメカニズムは解明されていない。しかし、地震前にFM電波に異変が起こることは、大学の研究者の間でも確認されているという。

10月14日宇宙飛行ミッションについての最新報告(第18回世界宇宙飛行士会議)

6.セルゲイ・アウデエフ/ビクトル・オラエフスキー(ロシア)
「自然災害及び人為災害を監視するための小型人工衛星群」
 オンラインによる短期地震予報用の宇宙システムの主要な目的。
 最近記録された地震前兆現象の例。地球大気圏-熱圏-電離層の地震モデル。
 "VULCAN" S/C測定法により記録された電離層プラズマのパラメーター。
 協力への提案。
このセッションの座長のロシアの宇宙飛行士セルゲイ・アウデエフさんも、自然災害防止について発表し、地上で起こっている地震、洪水などの自然災害、人為的な災害を観測・警報する「ブルカン(火山の意味)」という名前の地球観測システムを紹介しました。またサリュート、ミールの時代からISSにいたる現在も継続されている「ウラガン(大嵐の意味)」プロジェクトについて説明し、日本を含めて地震予知に関心ある国々もユーザとして参加してほしいと伝えました。
* Google検索 ["Sergei Avdeyev"+earthquake]
* 関連:Fortieth session of the Scientific and Technical Subcommittee of the Committee on the Peaceful Uses of Outer Space (17-28 February 2003)

10月6~8日:地震学会2003年度秋季大会

【特別セッション】(S21)地震予知―短期・直前予測における学問的課題―[コンビーナ : 地震予知検討委員会(代表者 : 石橋克彦)]
 大地震の長期予測については,限定的ながら,ある程度の展望が得られつつある.しかし,短期・直前予測については,震源破壊生成過程の理論的・実験的研究が進んではいるものの,実際の地震にどれほど当てはまるのか,変動量や先行時間の点で現実の破壊の進行が本当に捕捉できるのか,観測項目や観測手法は何が適切であるのかなど,あらゆる点で難問が山積している.本セッションでは,これらの学問的課題へのブレイクスルーを目指したい.前述のような具体的問題に関する理論的・実証的議論,新たな研究戦略の提案,短期・直前予知へのサイエンティフィックな批判など,幅広い投稿を歓迎する.

* 日本地震学会2003年度秋季大会のお知らせ
10月5日:日本地震学会 一般公開セミナー「関西の地震と防災」レポート

質問者 最近、地震予知に関して、「できない」として事実上学界が方向転換したと聞いているが本当なのか。
回答(尾池) 地震の予知はまだ緒についたばかりで、むしろこれから発展していく分野である。現時点で地震を予知することは不可能だが、予知 は日本国民の悲願であり、それに向かって前進を続ける科学界でありたいと思っている。
10月3日:十勝沖地震、4カ月前から電磁パルス観測 北大調査(朝日)

 震度6弱を観測した9月26日の十勝沖地震の約4カ月前から、震源地に近い北海道えりも町で電磁パルス(瞬間的な電磁波)が観測されていた ことが、北大地震火山研究観測センターの茂木透助教授(地球電磁気学)らの調査で分かった。電磁パルスは大地震の前によく観測され、今回も地震の7日前に特に多く出ていたという。
 茂木助教授によると、電磁パルスは6月ごろから観測され始め、9月19 日は明け方ごろから特に多い状態が断続的に続いた。地震前日の25日 はあまり出ていなかったが、26日にやや増え、27日以降はほとんど観測 されない状態に戻ったという。
 茂木助教授は「岩石が壊れ出すと電磁パルスが出るとされ、今回の地震に先立つ破壊は6月ごろから始まっていた可能性がある」としている。

* 関連:十勝・根室沖大地震を対象とする地震予知の実現に向けた総合的観測研究(地震予知研究協議会)

10月:ナマズの百葉箱 (JAL SKYWARD)

 神戸学院大学人文学部教授 住友 則彦
9月24日:1週間前に地震を予知 高知大と高知工科大などが研究、高精度センサー開発(毎日)

◇海中に発生する電圧をキャッチ
 センサーを海中に沈め、1、2週間後の地震を予知する研究を高知大と高知工科大などのグループが進めている。地震研究の分野では、1、2週間単位での地震予知に否定的な意見が強く、予知といえば数年単位での発生予測しか研究対象にならない傾向があるという。今回の研究が実を結べば、大きな注目を浴びそうだ。 【柴崎達矢】

 高知工科大内にある「環境先端プロジェクト研究所」の清岡隆二氏が加わる研究チームが00年、ナノボルト(1ボルトの10億分の1)単位の電圧を計測可能な高精度の海水中電磁界センサーを開発。従来は、同種のセンサーとしてはミリボルト単位のものしかなく、地震で発生する電圧をキャッチするのは困難だったという。
 今回の研究では、このセンサーを海中に置き、地震や津波の際に海中で発生する電圧の動きを感知、地震を予知することを想定。そのため、海中にセンサーを置いて遠くから電流を流し、感知の状況を確かめるなどの実験を繰り返してきた。
 研究メンバーの佐々木宏・高知大理学部教授らによると、従来も地震の2週間ほど前から何らかの兆候が現れる例は報告されている。佐々木教授は「1年以内をめどに紀伊半島か高知県沖の海洋にセンサーを設置し、地震予知システムの運用を実現したい。また、そのための予算措置を国や県にも働きかけたい」と話している。

* 関連:南海地震前兆を監視 高知大、高知工科大など(7.16 高知新聞)

9月24日:日本の地震研究 (FPCJ)

 北海道大学大学院理学研究科教授 島村 英紀

9月23日:第6回応用力学シンポジウム(土木学会)

 応用力学の研究とImplementation 東原 紘道
9月23日:[sems : 1185] 9. 12報告書

 上田さんによるまとめ。

* 関連:2003年9月南関東地震予報の学際的評価(初版)(早川@群馬大さん)

9月17日:第5回地震電磁気セミナー

 9月12日の串田法異常報告会を受けてデータ提示を歓迎いたします。是非みなさまのデータをお持ちよりください。

9月13日:温泉地学研究所・棚田俊收さんからの産経新聞神奈川県版記事に関するコメント

 記事の発言として、「・・・串田氏の研究は荒削りで、常識では考えられない部分もある・・・」と書かれていますが、
「串田氏のデータは観測事実です。しかし、地下での出来事を電波として捕らえられる科学的な理由はよくわかっていません。この点を理解するために、異分野の研究者が集まって検討会が開催されています。地震予知研究が発展するためにも、串田氏のデータ公開や検討会の開催はとっても重要な意義があります」という趣旨です。

* 関連:Astronomer Predicts Major Earthquake for Japan, Other Experts Express Doubts (Space.com)

9月12日:今、警鐘!関東大震災?! 早ければ9月中旬、M7.0以上?!(iiV News)

 FM電波の異常受信が地震に先行するという可能性が指摘されています。特に、串田嘉男氏は、その研究によって、9月半ばにもマグニチュード7クラスの地震が関東南部で起きる可能性ありとしています。

* 関連:地震予知の委託について(石原都知事会見)

9月9日:Russians Look To Launch Leaner Satellites (St. Petersburg Times)
"Small satellites cannot be used to collect high-resolution information from the Earth's surface either, because the equipment needs to be much bulkier," he said.

Yet there are areas where small satellites and spacecraft could be employed quite effectively, he said.

One of the institute's projects, the Vulkan system, will be used to monitor the Earth, its atmosphere and the ionosphere - the outer layer of the atmosphere - to forecast natural disasters such as earthquakes, typhoons, hurricanes and tidal waves several days before they happen.

IZMIRAN is developing the Vulkan satellite systems as part of Russia's 2001-05 federal space program.

9月9日:民間研究者が、FM電波でこれまでにない「異変」観測  「9月中旬、M7.0以上」関東大地震説の確度週刊朝日

 串田さんは98年から「公開実験」という形で、観測・分析結果を限定的に公開してきたが、一般向けには公表してこなかった。
「軽微な地震ならともかく、M6以上の地震の発生を事前に公表した場合に、数字だけが独り歩きして、社会混乱を起こす可能性もある。多くの人に公表するには、観測歴や過去の事例が少ないとの自覚がある」との理由からだ。また、もし、予測が外れたら、
「自分のやっているFM電波による手法だけでなく、電磁気学的な手法で前兆を検知することそのものまで否定されてしまう危険がある」

 しかし、今回はそうしたリスクを承知の上で、公表に踏み切ったことを串田さんはこう説明する。
「もっと整った観測条件で多くの事例を重ねたうえで、予測の公開ができればよかった。しかし、地震は待ってくれない。2月から続いた変動を目の当たりにして、この数ヶ月間、悩んできた。もし、自分の予測に近い形で、阪神・淡路大震災規模の地震が首都圏を含む南関東で発生した場合、大きな被害が予想される。ふいに大きな地震が来れば、あわてるかもしれないが、くるかもしれないと思っていれば落ち着いて対応できるはず」

 前出の上田教授は、こうアドバイスする。
「今回と同じような事例は、彼の過去の観測事例でも極端に少ないと聞いている。降水確率まで公表している天気予報ほどの確度があるかどうかは別として、 もし予想どおりになったときの事態の重大さを考えれば、これを無視すべきではない。受け取る側も、おのおのができるだけの対応をすべきだろう。 仮に予想した地震が起きなくても、串田さんはそれもよしとして研究に役立ててほしい。科学の進歩は仮説検証の歴史なのだから」

 串田さんの“地震予測”について懐疑的な、前出の溝上東大名誉教授もこういう。
「予知はできないが、関東にM7前後の地震はいつ起こってもおかしくはない。もし、東京という地盤の緩い過密都市の直下でそれが起これば、震度6強から震度6弱の範囲が広がり、大混乱が予想される。」

 串田さんの”予測”を信じる信じないは別として、地震への備えは、できる範囲でしておきたいものだ。
 なお、今回の件について串田さんの観測方法や経験則、データなどの詳細は、串田さんの公開実験の応援班のHPに9月7日の夜以降掲載される予定だ。
9月8日:地震予知新時代(engineering-eye)

 ドキュメント "リアルタイム地震予測学"の誕生 ~webで数千人が"目撃"した地震前兆~

9月6日[sems : 1175] FM電波観測で捉えた地震関連異常に関する検討会

 以下の研究討論会の案内の投稿を依頼されました.重複してお受け取りになられる場合があるかと存じますがご容赦下さい.なお本メールは転送自由です.

東海大学 長尾年恭

9月7日:観測だより第53号(温泉地学研究所)

 中国・遼寧省地震局 訪問記 杉原英和、伊東博
9月3日:サイエンスZERO(NHK)

 地震予知最前線 人工衛星で監視せよ

9月1日:東海地震 見直される防災計画 (NHK)

 予知を前提とした大規模な防災体制の整備が進められてきた東海地震。その根幹となる国の防災基本計画が今年、見直された。国の東海地震対策が始まって25年目。GPS観測網の整備や新たなコンピュータープログラムによる解析技術の進歩などで、地震のメカニズムの解明が進み、予知の精度も飛躍的に高まっている。こうした成果を防災に生かすために、段階的に情報を出し、よりきめの細かい防災計画に役立てようというものだ。

* 関連:地震防災と危機管理―東海地震と地震研究をめぐる四半世紀(科学)
8月27日:5-6. 内陸直下地震の予知(地震研究所要覧2003)

1) 松本盆地でのGPSによる地殻変動観測では,1998年7月から活発化した北部フォッサマグナ地域の地震活動に先立つ半年ほど前から測線の縮み変化を観測した(図1).
2) 地殻の応力の高まりや変形の進行によって,間隙流体の移動が生じると考えられる.これが地下水や地中ガスの変化に現れる.例えば,白馬の八方温泉の地中ガス中の水素濃度は,1996年には,約10%であったが,1998年には0.3 % に降下した.
3) ギリシャのVAN法と同様の観測により,1999年1月17日,明瞭な矩形状の異常電位変化が観測された.この直流信号は白馬観測網以外に,同じ長野県内の2観測網でも同時に観測された.この電流源の位置は1999年1月28日の地震(M4.7)の震源に近い.
4) 新潟県北部において,人工衛星LANDSAT画像の1994年夏の地温分布に,線状高温帯が発見された(図2).1994年11月からの群発地震活動および1995年4月1日の地震(M5.5)の準備過程における高温水上昇と考えられる.

* 関連:3-1-8 リモートセンシング平成14年度雲仙活断層群に関する調査成果報告書

8月26日:Satellites aim to shake up quake predictions(Quakefinder)
Although many seismologists see little merit in the idea, NASA and the US Air Force are together contributing about $1 million to provide data analysis and ground instrumentation to support experiments with the first satellite, the privately funded QuakeSat. Built by QuakeFinder of Palo Alto, California, the craft is now returning data from orbit after its 30 June launch. A second more expensive and ambitious satellite, funded by the CNES, France's national space agency, will follow next April.
Source: Nature 424, 478 (31 July 2003)

8月16日:東京都、地震予知に挑戦 発生直前の電磁気観測 東海大に委託(産経)

 東海地震や南関東直下型地震の発生に備えるために、東京都は地中に流れる微弱な電流(地電流)やさまざまな電波など、大地震発生の直前に起きるとされる電磁気学的な異常現象を検知することにより、地震発生の直前予知に乗り出すことを決めた。
 世界的にみると、ギリシャで、地電流の変化を観測して地震を予知する「VAN法」が採用され、これまでいくつかの成果を上げている。日本では東海大学地震予知研究センター(センター長、長尾年恭教授)が地電流などの観測・研究をしており、都はここに観測を委託。
 センターは伊豆諸島、房総、伊豆半島など首都圏を取り囲む地域を主な観測点としてデータ収集するほか、同センター以外に全国で行われている研究についてもネットワーク化を図って総合的な分析を行う。異常データが検出されれば、検証されれば、検証作業後、都に通知する。
 発生の直前予知に役立つとされる自然界の諸現象の報告や研究に対し、国は「系統性に欠ける」と消極的な姿勢を示してきた。
 これに対し、東京都は「さまざまな大地震の発生は切迫性をもちつつあるなかで、国の対応を期待していては後れをとる。直前予知への有力な情報として把握し、住民への情報提供を検討していくのが適切だと考えた」としている。

* 関連:地震先行現象研究の活用 3300万電子都市構築に向けた情報通信戦略(東京都総務局)
* 参考:理研/NASDA 地震フロンティア研究中間評価

8月11日Anticipating Earthquakes(NASA)

 NASAや他の機関で開発中の衛星技術は、市民と危機管理担当者に準備期間を与える数日から数週間前に、迫りつつある地震の兆候を見つけ出すことができるかもしれません。

* 関連:Earth Processes in Wake of Gujarat Earthquake Reviewed from Space (Eos Vol. 84 No. 26, 2003)
* 参考:Gravity Variations Can Help Predict Earthquake Behavior (Spacedaily)

8月6日:宇宙開発に関する長期的な計画の意見募集の結果について(文部科学省)

* 関連:No.736 :宇宙開発に関する長期的な計画の意見募集の結果について (宇宙作家クラブ)
7月28日:宮城県地震 大学院生予測していた!(報知)

 宮城県連続地震の3週間前に、ある大学院生が「8月下旬までに宮城県沖を中心とした地域でマグニチュード(M)7クラスの大地震が起きる」と予測、仙台市に伝えていたことが28日、分かった。この大学院生は過去の地震の発生前に、AMラジオの周波数帯の電磁波ノイズが急増することに注目。6月上旬、仙台市内の大気中の電磁波の変化から、過去のデータを基に「30%の発生確率」と予測していた。

7月25日:電気学会電磁環境研究会

 大同工業大学で開催されます。

7月24日:地震など新予知計画を提出 科学技術学術審が文科相に(共同)

 科学技術・学術審議会(会長・末松安晴国立情報学研究所長)は24日の総会で、来年度から5年間の第2次「地震予知のための新たな観測研究計画」と第7次火山噴火予知計画をまとめ、遠山敦子文部科学相ら関係各閣僚に提出した。
 地震分野では、新たに地震発生に至る日本周辺の地殻活動を予測するコンピューターのシミュレーションモデル開発を盛り込んだ。火山分野はこれまでの研究が着実に成果をあげているとして、引き続き監視観測を強化し、基礎研究を推進するとした。
 地震予知のための観測研究計画では、プレート(岩板)の沈み込みが原因で起きる海溝型地震について、仕組みがかなり明らかになったとして、地殻の動きをさらに高度に観測し、動きをモデル化することで次の地震の発生を定量的に予測することを目指す。

7月24日:第一回宇宙環境情報ユーザーズフォーラム

 通信総合研究所で開催されます。

7月23日:地震電磁気セミナー

 千葉大学西千葉キャンパスで開催されます。

7月21日:東南海地震(34)前兆の変動、掛川で観測(静岡)

 『7日7時10分に観測を開始した。昨6日の作業に続いて、ナンバー5262(原谷村板ケ谷)までの観測を終り、ナンバー5260(原谷村細谷)からナンバー5292(桜木村富部)までの観測を行った。いつものように午前中の観測値を整理していて驚いた。昨日観測したこの区間の観測値と比較して信じられないような数値だ』
 これは、昭和十九年(一九四四年)の東南海地震の前兆現象の中でも最も有名な「掛川の水準変化」の根拠になった手記だ。
 当時、陸軍技手(通称・測量官)だった越山敏郎氏(後の国土地理院測地部係長)は昭和五十一年(一九七六年)の国土地理院広報に、現在の掛川市で体験した水準測量中の“異常現象”を記した。それは、後に東海地震の直前予知にもつながるとされ、注目されることになった地殻変動の前兆現象で、昭和五十七年(一九八二年)に茂木清夫氏(当時東大教授)が科学的に焦点を当てて世に出した。

* 参考:1944年東南海地震直前の前兆的地殻変動の時間的変化(地震 第2輯)

7月17日:New satellites launched(ARRL)

 Quakesat was also launched on the same rocket and can be monitored on 436.675 MHz transmitting FSK and 9600-baud AX25 packet every 10 seconds.

* 受信に成功したようです(衛星通信入門

7月16日:地震の震度は平成7年まで気象庁の職員が感覚で発表していた(トリビアの泉)


* 震度について(気象庁)
7月7日:NEWS FROM MOSCOW (ESA)

 Project Vulkan - monitoring of the Earth seismic activity for earthquake and volcano eruption control. Launch date - 2006
7月2日:超小型衛星の打ち上げ成功が意味するもの(日経Biztech)

 今回の打ち上げでは、アメリカの宇宙からの地震検出を目指す「Quakesat」(重量3kg)も打ち上げられた。地震の時に発生するという電波を軌道から観測しようという衛星である。地震発生時に出る電波については旧ソ連が「サリュート」「ミール」などの有人宇宙ステーションで観測したことがあり、日本でも10年近く以前にNASDAが、地震予知に向けた観測衛星のコンセプトを学会などで発表したことがある。しかし、この分野については専門の地震学者の間でも、本当に電波が観測されるのか、また観測できたとしてもそれが予知につながるかどうかで意見が分かれており、結局「あやふやな根拠では衛星を開発することはできない」と、実現には至らなかった。
 しかし、衛星の開発と運用のコストが小さくなる超小型衛星ならば、このような挑戦的な「本当にできるかどうか分からない」ミッションの衛星も実現することができる。たとえ失敗したとしても、発生する損失は小さいので、その分野心的なミッションも実行することができるわけである。このことは、開発経費が巨額なためにとかく保守的なミッションや設計になりがちな宇宙開発分野にとって、大きな意味がある。

* 関連:東大・東工大の超小型衛星、ロシアから打ち上げへ
     重さ1kg 日本の学生ら手作りのサイコロ衛星打ち上げ成功―ロシアから(GIS NEXT EXPRESS)
     小国の期待に応えられるか、超小型人工衛星プロジェクト(HotWired)
* 参考:10cm角の超小型人工衛星CubeSatを開発した松永三郎(リクナビNEXT)

7月1日:電離層の揺らぎで津波検知 GPSで観測、警報に道(共同)

 高度2万キロの衛星からの電波で地上の位置を計測する衛星利用測位システム(GPS)を使って、高度60キロ以上のところにある電離層の揺らぎを観測することで、太平洋の津波をとらえることに、金森博雄カリフォルニア工科大教授やパリ地球物理学研究所、国土地理院の国際共同研究チームが1日までに、初めて成功した。
 解析速度が上がればリアルタイムで津波を観測することも可能で、精度の高い津波警報につながる成果。札幌市で開かれている国際測地学・地球物理学連合で発表する。
 津波が起こると、海面の盛り上がりが空気を押し上げ、それが波となって上空に伝わり電離層に揺らぎを起こすとされる。メカニズムは解明されておらず、これまで観測もされていなかった。
 村上亮・国土地理院地理地殻活動総括研究官は「現在はデータ伝送や解析に時間がかかるが、改良して津波警報につなげたい」と話している。

* 関連:Ionospheric detection of gravity waves induced by tsunamis (Geophys. J. Int.)
* 参考:Juliette Artru (Caltech)

7月:最近思うこと(分子研レターズ48)

 理論研究系分子基礎理論第二研究部門 中村宏樹

 この様なことは、特に、若い世代に正しく伝達されなくてはいけない。「優れた研究とはどういうものなのか」と言うことを。それには、哲学と信念を持って苦しみながら深く考える必要があるのだと言うことを。また、「本邦初公開」的な研究はやめましょう。「欧米で上手く行っているからやる」と言ったことを時々耳にするが、こういうことでは何時まで経っても真に独創性のある研究は出来ないでしょう。
6月30~7月11日:IUGG XXIII General Assembly State of the Planet: Frontiers and Challenges

 第23回国際測地学・地球物理学連合総会報告

* 第23回国際測地学・地球物理学連合2003年総会歓迎式典(宮内庁)
6月30日:雷雲から上層へと駆け上がる巨大稲妻、新発見される(HotWired)

6月30日:マルチプルオービットミッション(MOM)打上げ成功(三井物産エアロースペース)

 QuakeSat (RESTEC)|QuakeSat Project (Stanford)

6月27日:第8回リモートセンシング部会研究会(計測自動制御学会)

 「地震予知研究の最前線と地震防災対策の盲点」
  長尾 年恭(東海大学海洋研究所・東海大学地震予知研究センター)
 「成熟期を迎えたマイクロ波海洋リモートセンシング」
  久保田 雅久(東海大学海洋学部)
 「ADEOS-II打ち上げ後の状況について」
  五十嵐 保(宇宙開発事業団)

6月25日ネズミ、やっぱり大地震を察知? 電磁パルスが脳を刺激(朝日)

 大地震の前になぜ動物が騒ぐのか。昔からの言い伝えを解明するような動物実験に、大阪大の研究グループが成功し、ハワイで開かれている国際学会・生体電磁気学会で24日(日本時間)、発表した。大地震の前に特殊な電磁パルス(瞬間的な電磁波)が観測されるため、パルスをネズミに浴びせたところ、脳が刺激されて異常行動が起きた。
 実験したのは大阪大大学院理学研究科の池谷元伺教授と大学院生の横井佐代子さん、同大蛋白質研究所の永井克也所長、八木健教授らのグループ。
 きっかけは同研究所で飼っていたネズミが阪神大震災の直前、異常な行動をしたことだった。
 同研究所では、体内時計(24時間ごとに繰り返す生体のリズム)の研究のため、ネズミの動きを数値化し、30分ごとに自動記録していた。震災後に解析すると、地震の1日前から動きが急に激しくなり、普段は休む時間帯も動き回った。過去15年間の研究で初めて観測された異常さだった。

* 参考:Mouse circadian rhythm before the Kobe earthquake in 1995 (Bioelectromagnetics, 2003 May;24(4):289-91)

6月15日:「地震予知実験衛星」に見るコスト削減の試み(日経IT Pro)

 どうしてこんな涙ぐましいコスト削減が必要かというと、要するにお金を調達するのが難しいからだ。地震学者たちはあまり大きな声では言わないが、地震を科学的に予知することがあまりに難しいことが分かってきたため、半ばサジを投げてしまったのが実情らしい。
 そのためベンチャー・キャピタルも、地震予知の技術には、進んでお金を投資してくれないのだ。この点については日本も同じで、例えば東海地震への対策方針も、従来の「予知」から被害を最小限にとどめる「対策」へと、重点が移っている。
 QuakeFinder社の試みが評価されているのは、そうした絶望的な閉塞感を打ち破ろうとする挑戦であるからだ。今は安上がりの予知衛星でも、仮に、万一、その可能性が示されれば、投資家もお金を出してくれるだろうし、政府も援助してくれかもしれない。最初は「針の一突き」のように小さな突破口でも、それが徐々に広がるように,今回の試みが新たな地震予知技術への端緒となることが期待されているのだ。

6月2日:地殻活動の予測研究推進 新たな地震、火山予知計画(共同)

 文部科学相の諮問機関、科学技術・学術審議会の総会が2日開かれ、来年度から5年間の地震予知のための観測研究計画と、火山噴火予知計画の中間報告が了承された。
 地震については予知実用化は困難として、基礎研究重視に方向転換した前回の基本方針を踏襲。新たに地震発生に至る地殻活動を予測するシミュレーションモデル開発を盛り込んだ。火山は、引き続き監視観測の強化と基礎研究推進を掲げた。
 報告はそれぞれ、同審議会測地学分科会の地震部会と火山部会がまとめた。一般からの意見を公募した上で最終報告を まとめ、7月に文科相に建議する。

測量 2003年6月号

 衛星測位システムを用いた地震・火山噴火予知 東京大学名誉教授 村井 俊治 (有)環境地質研究室 荒木春視
5月28日:温度変化預測地震(人民網)

 強祖基は若い頃、旧ソ連のモスクワ大学で勉強し、そして長期にわたり国際交流に参与します。ロシアの科学者の啓発を受け強教授は、衛星で地面温度を測定する方法でこれらの問題を解決できることを発見します。

* 参考:強地震短期予測衛星熱赤外線技術

5月26~29日:地球惑星科学関連学会2003年合同大会

 S043:地震に伴う諸現象
 S049:地震予知
 E074:地震・火山活動に関連する電磁気現象

* 26日(月)19時30分から21時まで201A室にて第17回SEMS研究会が開催されます。
5月13日:Rockot Multiple Orbit Mission hits different Orbits(eurockot)

 6月末、プレセツク射場よりRockotでQuakesatの打ち上げ。

5月12日なぜ電磁気で地震の直前予知ができるか(早川正士)

 地震のメカニズムと地震予知、地震電磁気現象とは、地震に伴う電離層内電磁気現象などについて解説。宇宙開発事業団と電気通信大学グループのフロンティア研究の研究成果の重要な部分をまとめたもの。

* 関連:NASDA's Earthquake Remote Sensing Frontier Research - FINAL REPORT -
* 参考:Achievements of NASDA’s Earthquake Remote Sensing Frontier Project (TAO, 2004)

5月4~7日:3rd International Workshop on Statistical Seismology (UNAM)

 J-Y Liu and Y-I Chen: Seismo-ionospheric precursors
5月2日:Earthquakes influence ionosphere as evident from satellite plasma density-electric field data(ISSI)

 Team leaders: F. Lefeuvre (LPCE, France) and O. Molchanov (UIPE, Russia)
 Team members: M. Hayakawa (UEC, Japan), M. Balikhin, (Sheffield. Univ., UK), P.F. Biagi (Univ. of Bari, Italy), O. Pokhotelov (IPE, RAS, Russia) and E. Mareev (IAP, Russia)
4月23日:What's Shakin'? Tiny Satellite to Try and Predict Earthquakes(space.com)

 Quakesatの続報。打ち上げ予定は今年6月30日

4月:4th IAA Symposium on Small Satellites for Earth Observation

 Small Satellite Platform Vulkan
 Scientific Instrumentation for the Small Satellite Platform Vulkan
 Small Satellite KOMPAS-2

3月27日:Earthquake Warnings in Ionosphere? (Discovery Channel)

Originally, Russian scientists in the former USSR noticed electrical changes in the ionosphere in the days leading up to earthquakes by studying data beamed down from classified Soviet military satellites. Naturally, that data could not be shared with Western scientists at the time, Freund said.
Since then not a lot of Russian research into the strange ionosphere changes has been translated, or it has received a dubious reception by Western scientists who generally abandoned earthquake prediction research in the 1970s.
The truth is, Freund said, lots of things can change the ionosphere, including solar storms. That makes it hard to be certain that earthquakes are to blame. That's exactly why the new study is so important; it's an attempt to explain the connection, if it exists at all.

* Penetration of an electrostatic field from the lithosphere into the ionosphere and its effect on the D-region before earthquakes
3月13日立花隆「私の読書日記」週刊文春

 ひところ、地震予知などというものは原理的に不可能で、一部の地震研究者がそれが可能であるかのごとくにさかんに喧伝するのは、巨額の研究費を政府からせしめるためだ、というような話が、地震研究者の間から世間にもれ出て、地震予知はすっかり社会的信用を失った。97年には、文部省の測地審議会が、「30年間予知計画を推進してきたが、実用化のめどは全く立っていない」とその話を追認するような発表をした。しかしその後もなにかというと、地震雲、FM電波、生物反応、地電流などさまざまの現象を通じて地震予知が可能だという話があとをたたず、年に一、二度はその手の記事が週刊誌をにぎわせていることはよく知られる通りだ。私は、原理的に不可能説を信じていたので、そういう話は全部マユツパと思っていたが、長尾年恭『地震予知研究の新展開』(近未来社2381円+税)を読んで、考えをあらためた。
 最近、新しい学説、新しい技術によって、これまでになく多くの前兆現象データが積みあがりつつあり、予知の成功例と思われる例も、国の内外で幾つか出ている。特に注目されているのが、前兆的電磁気異常現象。前からFM電波の異常がよくいわれているが、実は、長波、極低周波、中波、超短波などでも異常(ノイズの多発と伝播異常)が出ており、地震と電磁気異常現象につながりがあるのはデータから明らかといってよい。ギリシアで予知に成功した地電流の変動も、電磁気異常現象の一種と考えてよい。
(中略)
 地震予知は、明らかに新段階を迎えており、広範多様な観測体制から得られるデータの積み上げをもう少しつづけると予知の原理的可能性が間もなく見えてきそうな気がする。いま注目されるのは、フランスが打ち上げる地震予知地球電磁場観測衛星(なぜ日本でできなかったのか)と、日本のアクティブ信号による地下監視ブロジェクト(「アクロス」計画)だ。この本にはおどろおどろしさが全くない。きわめて冷静かつ科掌的にあらゆる技術の可能性とその限界を評価してくれるところがいい。

3月12日:The QWIP Infrared Detector: A Cheaper Way to See in the Dark(space.com)

 「大地震の直前、衛星画像は地表温度が周囲の大気より2~4度高いことを示した」とFriedemann Freund(NASAエイムズ研究センター物理学者)は語った。Freundは、熱変化を追跡するために新しいQWIPを利用した。「これらの温度変化は、非常に急速に移り変わり、地震が数日から数時間内に発生します」
 熱変化の実際の原因は未解明ですが、もし地震前の岩石の応力や変異によるならば、衛星に搭載された100万画素のQWIPは、今日利用されている気象衛星よりはるかによい現象をとらえることができるでしょう。
 「我々の目的のために、これは確かに大きなツールとなる」とFreundは語った。

* 関連:More images from earthquake lab studies at Carnegie (NASA)
冷却型素子ですが、製造時に感度帯域を決められるので、フィルタが不要になること、量子効率がいいことのよです。 それと、帯域がかなり自由に決められるようになっているみたいです。関連で紹介されたJPLのは、1997年に当時のを見ましたが、長い方で8μmが限界ということでしたが、 今ではもっと長くできるそうですし、カットオフもするどくできるらしいです。(熱赤外な識者のコメント)
* 参考:Mid-infrared emission prior to strong earthquakes analyzed by remote sensing data (Advances in Space Research, Vol. 33, Issue 3, 2004)

3月:大気電気学概論(日本大気電気学会編)

 大気電気学概論(コロナ社)

研究者に求められる「魂」(科学3月号)

ロバート・ゲラー (Robert Geller 東京大学大学院理学系研究科(地震学))

 数十年前にアメリカで大型高エネルギー物理研究所の予算要求が米国会の聴取会で議論された時,以下のやり取りがあった.代議士:「この計画は国防にどのように貢献するか?」.所長:「国防にはまったく貢献しないが,国家を防衛すべきものにする」.すなわち,科学の役立つ面を無理に祭り上げずに,はっきり文化的な側面を強調したのである. 残念ながら,多くの場合,日本の研究界のリーダーはアメリカの所長ほど勇気がない.例えば,地震の破壊機構を解明する研究がいつの間にか「地震予知計画」と名付けられたり,情報科学の基礎研究が「第5世代計画」となるなど,素晴らしいが全く実現不可能な応用的スローガンが建前上の設置目的となるが,誰でも常識のある人にはこれが所詮無理だろうと分かっていたはずである.

* 日本の地震予知研究(地震予知研究協議会)
2月27日:院士呼喚発展地震監測衛星 関連部門表示支持(中国新聞網)

 先日、北京で開催された「地震衛星専門家研討会」で、上海天文台の葉淑華院士、中国科学院武漢分院の許厚沢院士、武漢大学寧津生院士、劉経南院士、中国地震局馬宗晋院士、馬瑾院士と会議に出席する30数人の専門家は共同で、中国は地震監測衛星をできるだけ早く発展させるべきと提唱しました。
 中国航天報によれば、院士と専門家は中国が地震観測衛星を開発することは非常に必要であると同意している。 中国の経済発展と社会進歩と、米国、ロシア、フランス、日本における衛星地球観測技術の成功と相まって、中国は関連する科学的研究を技術的思考として考慮に入れ、震災の監視と予測作業を組織している地震監測衛星計画は成熟した。 地球の衛星観測システムの確立により、高精度・準リアルタイムステレオ観測や地殻変動の動的観測、重力場、電磁場、地熱場の異なる時空間スケールでの地震予知や科学研究に重要な情報が提供され、 効果的な方法。
2月16日:南海地震にまつわる謎 前兆現象の仕組み解明を(高知)

 視点 京都大学教授 尾池和夫(地震学) 

* 関連:雪どけは地震をトリガーするか(日置幸介)
2月15~27日:東京いのちのポータルサイト展

(7)「何秒前、何日前に地震を知ることができるか? 地震の早期発見は、ここまで来た」
2月22日(土)15:30~18:00
■基調講演 15:40~16:40
(1)「東海地震、首都圏直下地震の予知体制について」
  切迫する東海地震、首都圏直下地震の予知体制はどうなっているのか?
   溝上  恵(地震防災対策強化地域判定会会長/東京大学名誉教授)
(2)「地球電磁気的方法による地震早期発見の最前線」
  電磁気等による地震の早期発見技術はどこまで来たのか?
   上田 誠也(東海大学教授/東京大学名誉教授)
■パネル討論
  パネリスト 長尾年恭 (東海大学教授=地球電磁気)
   横田 崇 (気象庁地震火山部地震情報企画官)
   宮本英治 (リアルタイム地震情報利用協議会)
   竹田宜人 (気象予報士・東京都立大学:市民による地震の早期発見)
   石黒正幸 (文化放送編成局編成部専任部長/在京ラジオ災害情報担当者会議メンバー)
  コーディネータ 犬伏裕之 (電気通信大学)

2月14日:地球電磁気的方法による地震予測の現状と展望(深田地質研究所)

講師:上田誠也氏(東大名誉教授)
 地震災害の軽減には防災対策とともに予測・予知も大切である。大地震が事前に予告されたなら人々の生命を劇的に救うことができる。的確な予測・予知はまだ困難だが、それに向けての電磁気的手法研究の新しい展開について解説する。[pdf]

* 関連:第64回深田研談話会アンケート集計結果
2月6日:旧ソ連核実験場で異常高温 広範囲に出現、実験影響か(京都新聞)

 【モスクワ6日共同】旧ソ連最大の核実験場だったカザフスタンのセミパラチンスク実験場で、地表温度が周辺より10度以上高い地帯が4000km2もの広範囲にわたり出現していることが6日までに、同国の研究者の調査などで分かった。
 原因は不明だが、核実験との関連も指摘されており、京都大学経済研究所塚谷恒雄教授(資源環境問題)らのグループはカザフスタン、米国との共同研究を計画。早ければ来年から、衛星写真の詳細な分析や現地での温度調査を検討している。
 カザフスタンのスルタンガジン科学アカデミー副総裁宇宙研究所長)によると、この現象は1997年、農業用水の調査をするため現地の衛星写真を撮った際、一部だけが冠雪していないことから判明。さらに衛星からの赤外線カメラによる撮影で、異常な高温が確認された。

写真=2000年11月に撮影されたセミパラチンスク核実験場周辺の衛星写真。
黒線内が実験場。冠雪している白い部分の中に、雪のない黒い部分が見える(共同)

* 関連:セミパラチンスク旧ソ連核実験場付近における地表面の異常高温の解析(戸田健太郎)
    Thermal IR Satellite Data for Earthquakes Research
    Google [monitoring+temperature+anomaly+semipalatinsk]
* 参考:Semipalatinsk-16 (FAS)

1月28日:Kosmotras signs contract for the launch of DEMETER spacecraft(コスモトラス)

 10日、DneprロケットでDEMETERの打ち上げ契約を獲得した模様。

1月21日:第19回宇宙利用シンポジウム(宇宙科学研究所)

 宇宙ミッション研究会特別セッション「宇宙からの地震探知

1月20日:FM電波観測による地震予報の可能性について 串田嘉男(八ケ岳南麓天文台台長)

 見越し線以遠のFM電波の後方散乱を利用した流星観測中に,特徴ある変動が観測されることに気づいた。この変動が地震活動と相関があることがわかり,1995年から観測を本格化してきた。現在までの観測で経験された様々な現象から,困難とされる地震発生予報の可能性を探る。
1月10日:手作り人工衛星を打ち上げよう! 都立航空工業高専 首都圏の地震予知や防災目的に 今秋にも落下実験(日本工業)

 都立航空高専の人工衛星プロジェクトに対し石原慎太郎都知事は、「無名に近い人たちの意欲と技術のポテンシャルが日本を支えている。都の責任で国の専門機関に取り次ぐことはお約束して差し支えない」と全面支援する考えを表明しており、打ち上げに期待が高まっている。
 このプロジェクトには島田校長、電子工学科の若林良二助教授武藤憲司助教授高野邦彦助手、電子工学科の学生らが参加している。同校は、日本機械学会などが主催する衛星設計コンテストに93年の第1回から毎年参加し、第2回以降は毎回入賞を続けている。「これだけの実績があるのなら、この成果を実際に人工衛星づくりに生かそう」(島田校長)と、2001年ごろから開発が始まった。
 人工衛星は平時には地震予知に使うことを想定している。人工衛星から地上に向けて出す30~3000メガヘルツ帯のFM(周波数変調)波の電波で地震の発生を予測する。大規模地震発生の数日前から電離層のF2層の密度が濃くなることがあり、地上のパラボラアンテナでの受信が難しくなることを利用するもので、「阪神・淡路大震災でもこの現象が観測されている」(若林助教授)という。

1月4日:[sems : 1094] 電界観測による地震動予知(高橋耕三さん)

SEMS会員の皆様 明けましておめでとう御座います

 02年11月12日の地震学会での「地震と同時に発生する電界」の発表の際、岡田氏から下記(1)の質問を、本蔵氏からは下記(2)の Comment を頂いた。
(1)「茨城県沖では、M6クラスの地震がいくつも起きているのに、それらの地震の電界に言及しないのはなぜか」
(2)「波形も観測すれば発生Mechanismを解明できる」

(1)の答:千倉での三栄の長時間連続記録計8D23A(記録速度 2 mm/sec、時刻誤差 0.1 sec 以下)による観測は、93年5月から99年11月まで行われたが、95年3月以降は、1 - 9 kHz での観測のみで、0.01 - 0.7 Hz での観測は行われなかった。即ち、「地震と同時に発生する電界」の観測は行われなかった。一方、千倉のK-NETの記録は、2000年6月以降しか無い。
 波崎でも8D23Aによる観測が行われたが、記録計が直ぐに止まり、三栄も原因を究明できず、01年5月に、千倉のを波崎に移設して観測を再開した。しかし、安定して記録できるようになったのは02年4月以降からのみである。その理由は、98年度までは、研究費が支給されていたため、記録紙は継ぎ接ぎしないで使用していたが、01年5月の再開後は継ぎ接ぎして使用し、その際、継ぎかたが不適切で、継ぎ目で止まることが多かったためである。なお、波崎の南東14km の銚子のK-NETのデータは96年9月からある。
 以上の理由から、地震と同時に発生した電界の記録は、現在の私の手元には、地震学会で発表した 02/06/14 及び 02/10/16 のもののみである。

(2)への対処:学会の終了後、直ちに、既存の Filter を使用して、波崎の 0 - 0.7 Hz と 0.01 - 0.7 Hz を 0 - 30 Hz と 0.01 - 30 Hz への変更を試みたが、Channel 間干渉などで、従来からの受信 System Noise Level:5μV にすることができなかった。このため、新たに Filter を作成し、Filter、Amp. 等を周波数帯毎に独立の系統とすることで、所要の Level:5μVを維持できた。02年12月以降の波崎の8D23Aでの観測周波数帯は下記の通りである。
  0.01 - 1.1 Hz、0.23 - 30.0 Hz、1 - 9 kHz

 千倉にはK-NETの地震計があり、電界と地震波の関係を知るには、千倉での観測は波崎以上に有利と思われる。なお、千倉の 1-9 kHz の外部雑音は、波崎よりも非常に少ないため「地震時に発生する 1-9 kHz の 電界」も観測される可能性がある。また、千倉と波崎で同じ地震を8D23Aで観測できれば、電界の伝播速度を直接観測できる可能性がある。
 上記の理由から、事情さえ許せば、千倉での8D23Aによる観測も再開する予定でいる。

[電界観測による地震動予知の意義]
 リアルタイム地震情報システム、気象庁ナウキャスト、ユレダス等のP波からS波を予報するシステムでは、P波の強度がS波のそれよりも小さい場合に、その有効性が大きい。しかし、兵庫県南部地震の際は、震源域に近い点ほど、P波/S波の比が大きく、壊滅的被害の多くはP波による上下動によって生じたと言われている。上記のK-NETの銚子の 02/06/14 及び 02/10/16 の波形からも、P波による被害の方が大きいことが推定できる。このため、上記の地震情報システムが電界観測も取り入れ、P波の地震動も予報すれば、有効性が更に大きくなる。
 電界による予報は、P波によるよりも、10秒程度早くなる。この10秒は、航空機の離着陸の緊急停止、高速道路での自動車の緊急停止、高速鉄道での緊急減速、等には有意義となろう。
 次に、原発の原子炉(以下、原子炉)の地震災害防止のためのP波予報の意義を検討してみる。
 地震の際、原子炉は下記の3種類の方法で緊急停止されるとのことである。
 (1) Operatorが地震動を感知して手動停止
 (2) 地震計が地震動を感知して自動停止。
 (3) 沸騰水型軽水炉の場合は、地震動による泡の減少に伴う中性子の増加による自動停止
 電界観測による停止が追加されなくても、上記の緊急停止だけで地震時の原発の安全は万全と思われるかもしてないが、下記に述べるように、必ずしもそうではない。

 米国北東部が無人になる可能性が生じた79年3月のTMI(Three Mile Island)原発事故の炉心溶融は、緊急停止から6分後に始まっている。事故の第一原因は、91年2月の関電美浜と同じような点検後の弁の開け忘れであり、主原因は水位計の表示に従って行われた緊急炉心冷却装置の手動停止であった。 86年4月のChernobylの場合は、関係者が更なる爆発を防ぐための人柱となってしまったため、はっきりはしない点が多いが、TMIと異なり、事故は停止と同時に始まった可能性が大きい。この場合の原因は、全制御棒を引き抜いて運転したため、停止時に暴走状態になり、緊急炉心冷却装置は手動で停止してあったためと言われている。事故による死亡者数は約三桁異なるが、事故の原因が運転規則違反である点では、99年9月の東海村の臨界事故と同じである。
 停止後に事故が起きるのは、停止は単にU235の核反応の停止を意味し、停止後もU235の核分裂によって生じた放射性物質の崩壊熱は発生し続けるためである。TMIの場合、冷却水の循環が止まったため、炉心はこの崩壊熱により数千度となり、約2時間後には炉心の半分が溶け落ちた。この事故の際、炉心溶融により発生する水素の爆発による原子炉の爆発の可能性が指摘され、その防止に全力が注がれた。
 Chernobyl の事故では、暴走に伴う突沸・水蒸気爆発と、それらに起因する水素爆発により、原子炉が爆発したと言われている。

 現在の我が国の原発の地震対策では、P波の到来を感知し、S波の到来前に原子炉を停止するため、たとえ、S波による配線・配管の断線・破損等の些細な機械的地震被害が原因で、炉心の冷却水喪失が発生しても、せいぜいでTMIの事故程度に収まるとしている様である。しかし、震源が近い場合は、前述のようにP波の初動が強く、P波を感知したときは制御不能・炉心冷却水喪失が発生している可能性があり、全負荷運転中に炉心冷却水喪失が発生すれば、TMI型の事故ではなく Chernobyl型となる可能性が大きい。しかし、電界の観測により、P波の到来前に原子炉を停止しておけば、停止から10秒間で、崩壊熱による炉の熱出力は運転時の約5%にまで下がっているため、Chernobyl 型の事故となる確率は零に近くなる。たとえ、1秒前でも、停止していれば、地震動による突沸・暴走・水蒸気爆発・水素爆発・原子炉爆発と言うシナリオは描かなくても済む。即ち、電界観測により地震動を予知し、対処すれば、原発の地震被害は画期的に軽減できることになる。

 広く言われているように、地震により原発が大事故を起こす確率は、確かに非常に小さい。しかし、それによる被害の期待値は非常に大きいことに留意して、速やかに、地震動の予知に着手すべきであろう。

* 関連:地震・火山噴火と電磁場変動(防災科研ニュース)
* 参考:電磁波による地震予知(CRL NEWS 1995.8 No.234)| 多点計測技術及び発生源同定技術に関する研究(電子技術総合研究所)

1月1日:電気学会

 電気学会の研究調査委員会に自然電磁気現象解明と電磁界解析調査専門委員会が設置されました。(2005年末まで)