地震電磁気観測衛星国際ワークショップ

日 程:平成20年2月29日(金)
場 所:宇宙科学研究本部 相模原キャンパス 本館2階会議場 【アクセス
主 催:宇宙航空研究開発機構
後 援:(財)宇宙科学振興会 東海大学地震予知研究センター IUGG/EMSEV
協 力:宇宙理学委員会地球電磁環境モニター衛星(ELMOS)ワーキンググループ

3月1日はInternational Workshop on Space and Lithosphere Environment Changes in Asia (IWSLEC2008)が開催されます。
開催趣旨
 低周波電波の発生、大気光強度の増加、電子密度・温度の増加、あるいは減少、降下荷電粒子の増加など、衛星観測において地震の前駆現象は多く報告されてきた。最近では特に電離圏全電子数の変化などに関する報告は急激に増えている。
 一方、電離圏へ如何なる機構で地震が影響を及ぼしているかについては未だ不明で、これらの報告に対し、懐疑的ないし否定的な研究者が存在するのも事実である。
 地震の発生に伴う人的・物的被害は社会的な大きな問題であり、電離圏研究者にもその軽減に貢献できる領域があるのなら、その英知を役に立てる価値は大いにあるだろう。
 従来の局地的な地上観測による地震前兆現象の研究進展を妨げている大きな要因の一つは、大きな地震の発生が時間的・空間的に疎であるためデータの集積に多大の時間を要することである。しかし、全地球を常にカバーする衛星観測はユニークな貢献を果たすことが期待される。事実、マグニチュード7〜8級の巨大地震は全世界では年間10〜20回程度発生しており、これが世界各国で衛星観測が実施・提案されている大きな理由となっている。

 我々の研究グループは、1981年に打上げられた日本の太陽観測衛星"ひのとり"に搭載された電子温度測定器のデータを解析し、1981年11月から1982年1月にフィリピン周辺で発生したマグニチュード6.5以上の3つの地震の発生約5日前から電子温度が下がりはじめ、地震発生約5日をかけて回復することを見出した。この現象は電場が作用しているとすると、地上観測によるデータも含めて説明することが可能である。
 しかしながらその電場の発生機構、それが電離圏に影響を及ぼす機構については、未だいくつかのモデルが提案されるに留まっているのが現状である。これらの謎を解くには多くの事例を研究し、先ず現象論を確立、しかる後に現象を説明しうる理論を構築するというステップをとることになる。
 本ワークショップではこれまで地震観測衛星を既に打上げた国、打上げを予定・計画している国々の研究者を招待し、国内電離圏研究者との国際共同研究組織を作りあげるとともに、世界的に共同して観測衛星を打上げ、データを共同解析することを目指す最初の機会を提供したい。(小山孝一郎)

招待予定講演者 【プログラム(案)

  • Dr. Sergey Pulinets, AEROCOSMOS副所長 [HP]
    地震の電離圏への影響の研究に関してはパイオニア的存在。
    2001年に打上げられた世界初の地震電磁気観測衛星Compassの計画立案・開発に従事、Compass-2及びバルカン地震電磁気観測衛星群の提唱者。(バルカン構想は第18回世界宇宙飛行士会議で、セルゲイ・アウデエフ宇宙飛行士から日本を含めて地震予知に関心ある国々もユーザとして参加してほしいと伝えられました。)
    最近までメキシコ国立自治大学で、ロシア・メキシコ共同のマイクロ衛星UNAMSAT-3を開発していました。
    著書のIonospheric Precursors Of Earthquakesは、地震電磁気観測、特に衛星を利用した観測についてまとめられた世界初の英文書籍です。
    * 関連:ロシアの宇宙ステーション利用計画について(第21回宇宙ステーション利用計画ワークショップ)
  • Dr. Tatuso Onishi, CETP/CNRS
    2004年6月に打上げられたフランスの地震電磁気観測衛星DEMETERのデータ解析者。
    DEMETERは「地震予知の科学」や仙台放送開局45周年記念特別番組「リサーチャーズ 地震予知の探求者たち」に登場しました。
    * 関連:First Results of the DEMETER Micro-Satellite (Edited by Dr. Michel Parrot, Planetary and Space Science, 2006)
    * 参考:フランスが電磁場観測衛星を打上げ(NISTEP 科学技術動向、2004年8月号)
  • Dr. Valery Korepanov, Lviv Centre of Institute of Space Research, NKAU [HP]
    2004年12月に打上げられたウクライナ・ロシア共同の地球観測衛星Sich-1Mに搭載された電磁気観測装置VARIANTの主任研究者。(Ukrainian Program of Earth Observation 2005の20〜30ページ参照)
    ウクライナが2010年頃打上げ予定のIonosat計画の提案者。
  • Dr. Meng Guojie , Institute of Earthquake Science, China Earthquake Administration
    中国の地震電磁気観測衛星:Chinese Seismo-Electromagnetic Satelliteプロジェクト科学者
  • Dr. Birbal Singh, Dept. of Physics, RBS College
    Electromagnetic Phenomenon Related to Earthquakes and Volcanoesの著者。
    * 参考:Electromagnet Spectrum: A Friend of Humanity (Radio Science Bulletin, No. 317, 2006)
  • Prof. Jann-Yenq Liu, Institute of Space Science, NCU [HP]
    台湾版地震フロンティア研究のiSTEPプロジェクトの共同リーダー。
    地震の電離圏擾乱の統計的解析に関する論文を多数執筆。
  • Dr. Dimitar Ouzounov, Planetary Geodynamics Laboratory, GSFC [NTRS]
    地震に伴う衛星熱赤外放射の研究者。[Dimitar Ouzounov's profile]
    最近はジョージワシントン大学宇宙政策研究所主催のワークショップで、Learning new methodologies to deal with large disasters: Multisensor approach of analyzing atmospheric signals and search for possible earthquake precursors.を発表。
    * 関連:地震の予測Earthquake Alarm
  • Prof. Masashi Hayakawa, Univ. of Electro Communications [HP]
    NASDA地震リモートセンシングフロンティア研究地震電磁気チームリーダー。
    論文・著書多数。[Amazon]
    最近はJapanese Activity on Seismo Electromagnetics Publication list (2002-2006)を編集。
    * 関連:Seismo-Electromagnetics as a New Field of Radiophysics (Radio Science Bulletin, No. 320, 2007)
        Recent Progress in Seismo Electromagnetics and Related Phenomena (Edited by Masashi Hayakawa, Sergey Pulinets, Michel Parrot and Oleg A. Molchanov, Physics and Chemistry of the Earth, 2006)
  • Prof. Seiya Uyeda, Tokai Univ.
    理化学研究所地震国際フロンティア研究プロジェクトリーダー。
    国際測地学・地球物理学連合(IUGG)地震・火山噴火に伴う電磁現象国際際委員会(EMSEV)前委員長。
    * 参考:地震予知研究の歴史と現状(学士会会報 2007-IV No.865)

    [ELMOS-WG.html]