地球環境観測委員会平成6年度報告書
固体地球サイエンスチーム・地球電磁場ミッション調査サブグループ


* 平成6年度に設置された固体地球サイエンスチーム/地球電磁場観測ミッションサブグループは、平成8年度より地球電磁気サイエンスチームとして平成11年度まで活動

1.概要

 固体地球に起因して地球に重大な影響をもたらす諸現象のうち、特に地球電磁気現象に注目して、委員会形式で調査活動を行った。年度途中から開始したが、委員各位の積極的な活動により、参考に示す調査報告書が完成した。

2.主要な活動成果

 固体地球に起因する地球周囲の6成分電磁場観測について調査した。衛星による6成分電磁場観測は、電磁場環境だけでなく、地震や様々な災害、固体地球現象等に利用できる。残念ながら、これまでに例がないものの、固体地球の電磁場に関する精密データの蓄積は、科学的にも大きな意義を有する。地球周囲の電磁場変動の現状について、極地域を除いたグローバルで基礎的なデータを総合的に取得することは、それ自体が新規性に富む。今後のリモートセンシング・ミッションを設計する上で重要な基礎資料となりうる。
 地球電磁場観測ミッションを提案するに当たって、実用的な波及効果としては、例えば、地球電磁場を利用する地震前兆現象観測ミッションが想定できる。ギリシャでは、電磁場の変動による地震予知が成功している。これを極地域を除く全球的(グローバルな)観測に発展させるには、衛星観測と精密地上観測網の組み合わせが必要になる。地球電磁気現象に関するグローバルな変動情報が精密には得られていない。しかし、平成7年1月17日の兵庫県南部地震は大きな被害をもたらし、地震前兆現象としての発光現象や、異常電波の検出等が多く観測された。電磁気現象に関する社会的関心と科学者の果たすべき社会的責務についても、大きな関心が集まっている。
 科学的側面については、グローバルな地球電磁場情報によって、地球物理科学に大きな寄与をもたらすと同時に、雷、通信擾乱、太陽風変動等の、さらに多くの社会的有用性にも波及する効果があると考えられる。地球周囲の固体地球に起因、または相互作用する電磁場変動特性を、新しい観測手法で極地域を除いてグローバルに得ることは、それだけでも大変に意義がある。
 地上設備によるこれまでの地球電磁場観測が、世界的ネットワークとして機能するには、まだ多くの段階が必要である、世界的にデータ解析をするための標準的変動データは得られていない。異常現象は標準からのずれとして測られるが、地球電磁場変動の異常性は、観測網の発達した狭い地域のみしか把握できず、本当に異常と捉えることが可能か否かは確然としない。反復してグローバルなデータが何度も測定できる衛星による手法が注目される所以である。
 以上の立場で、地球電磁気観測衛星の可能性と科学的意義を探り、報告書として取りまとめた。

3.次年度以降の活動目標

 別途公表する報告書をもとに、次年度以降は、積極的に新規衛星ミッション提案実現へ働きかけを強めたい。具体的には、以下の提案が挙がっている。

�|狼經超�観測委員会でのフレームワーク
 地球電磁場環境観測サブグループの作業は地球電磁気サイエンスチームを新設してミッションの議論を継続するとともに、将来衛星/センサチームに地球電磁場センサ・サブグループを新設してミッションパラメータの検討を行う。プロジェクト化された段階でミッションチームを編成し、及び観測/校正/検証等の計画を策定する。

��国内観測網データとの有機的結合
 1987年、国際測地学・地球物理学連合(IUGG)に国際地球深部研究(SEDI)委員会が設置され、地球核及びマントルの研究を地球科学の大きな課題として取り上げるに至った。日本においても地球深部に対する関心が高まり、1990年の“地球中心核”が文部省科学研究費の重点領域研究として採用された。その一項目として取り上げられたJアレイは、個々の地震観測網で得られたデータを編集・統合し、日本列島をひとつのアレイとみなそうとするものである。これによって観測点付近の構造の影響を取り除き、内部構造の本質的性質を浮かび上がらせることができると期待されており、これらのデータをおさめたCD-ROMの公表も予定されている。貴重なIN-SITUデータであるJアレイのデータは、衛星データと相互補完して今後の研究に大いに活用されることが期待される。

�9馥盡Φ羌ヾ悗龍�力体制確立
 国立防災科学技術研究所、地震研究所、地質調査所、機械技術研究所、通信総合研究所等の国立研究機関を中核とした衛星データ解析及び研究協力体制を確立し、文部省・大学も含めた横断的協力を支援する。

�ぃ福檻病脳紊仮�型衛星以外の搭載提案
 本衛星構想(ELMOS)は、最短可能性としてJ−I打上げによる小型衛星を想定するものであるが、今後の衛星開発の動向を見定め、もし早期実現が可能であれば、H−II打上げの大型/相乗り衛星への搭載を働きかける。

 以下に、本委員会の活動状況を示す。

委員会開催日程と概要

第1回/平成6年9月1日(木)
 最初に、地球環境観測委員会の概要と地球観測長期シナリオについての説明が行われた。
 地球電磁場観測ミッション調査と当サブグループの目的と地球電磁場環境観測の意義について議論を行い、地震予知との相関を検討し、最終的には地震予知のオペレーショナルな衛星観測体制の確立を目指すとした。今年度の目標は次年度の計画に反映できるように地球電磁場観測の意義を明確にしてミッションプランを決定するとの説明がなされた。J−Iロケットを用いたミッション提案の説明も行われ、衛星からの全地球電磁場観測データを使用することで、ギリシャで成功した地電流観測による地震予知の実証的裏付けとなる可能性があるとの説明がなされた。
 大気中の電磁場雑音において、雷の広域分布計測が工学的に意味があり、超高層電磁気雑音の全地球的分布は、電離圏及び磁気圏の物理過程の解明にも貢献可能で、J−I小型ミッションの創出という面からも本ミッションは注目できるということである。これよりNASDAミッションとして実現可能なように、このチームより地球電磁場観測の意義を明確にまとめるという提案が出された。
 CNESとの本ミッションに関する打ち合わせについての報告が行われ、CNES,ESA、ロシアにおいて、当ミッションの優先度が低いということであった。衛星システムはJ−Iロケットで実現可能であるということである。
 宇宙からの地球電磁場観測に関連するトピックスとして、地震前兆超低周波の方位測定観測・衛星観測とその発生電波機構の研究について報告が行われた。ここで、地震前兆超低周波のデータとしての信頼性の低い理由として、発生した電波と地震の因果関係の不明確さと、地震前兆電波発生モデルが確立していない点が指摘された。

第2回/平成6年10月28日(金)
 衛星からの地球電磁場観測の意義・重要性及びミッション要求について各委員より説明が行われた。まず観測項目として、DC磁界、電子密度の測定、ULF/ELF/VLFの電磁界6成分波形観測が挙げられ、研究項目としては、地震前兆波の方位観測と地震予知、超高層プラズマ波動・低緯度電離圏電磁雑音環境の研究が挙げられた。次に、北海道東方沖地震時の電界変動について報告が行われ、地震動と同期した電界変動を電磁誘導で説明可能であるということが報告された。また、地球磁場のグローバル観測での低高度観測と高高度観測の2種類の必要性が報告された。

第3回/平成6年12月26日(月)
 報告書メモについて各委員よりメモの発表と検討が行われた。
 初めに、地震予知について地電流観測による地震予知に積極的なギリシャの例が報告され、日本での可能性については雑音のために、観測ステーションの確保が困難であることが報告された。次に、固体地球と活構造の遠隔観測の説明があった。固体地球の全球観測は、全世界に電磁場観測ステーションを整備することにより可能であるが、地上のみでは困難なため、衛星による地球電磁場観測ミッションが望まれる。今後の地球観測衛星への新規提案として、地球観測衛星として社会的に有用性のある技術試験が可能で、将来の実用衛星への継続、科学的有用性がもたらせるということが重要という説明が行われた。そのため、電磁場長波帯6成分計測、波形情報収録、一定地域の連続的モニタ、定量的な評価のための解析というミッション要請が出された。
 観測項目については、DC電界、電子密度の測定、ULF波動、VLF波動、雷イメージング・フォトメータが挙げられた。データの継続性のためMAGSAT、OERSTEDの後継機の必要性と、地球磁場の分布と時間変化の解明の重要性が説明された。また、グローバルな雷磁・粒子環境の地上観測網計画についての紹介がなされた。
 計画の実現への進め方について地球電磁場環境観測衛星システム構想の説明が行われ、衛星の仕様についての検討の必要性と、地球電磁場観測ミッションの地球観測長期シナリオへの位置づけを明確にする必要性を検討した。

第4回/平成7年2月24日(金)
 本報告書公表のためのレビューを実施し、アラスカにおけるスプライト現象のビデオ映像の検討、及び、地球電磁場の実利用の検討を討議、又、次年度以降の活動計画を検討した。
[地球電磁場環境観測ミッション]