ナマズの行動と刺激要素に関する研究
―地震とナマズの関係解明にむけて―
Relationship between catfish activities and stimulative elements.
- Does catfish predict earthquakes?-


はじめに

 地震に関係すると報告されている動植物の異常や発光現象などのいわゆる宏観異常現象の存在に対しては, 明証性が得られていないものの, 完全に否定する結果も得られてはいません. この様な背景から, 我々は宏観異常現象の定量的検証を進めるべく, 動物異常行動のうち比較的研究の進んでいると思われるナマズの行動に着目し, 既往資料の整理と実証的な研究方法に関して検討を始めました. 


研究の歴史

 地震に伴う電磁気現象がナマズの異常行動を誘発するのではないかという考えは,1917年にParker & Van Heusen (1917)によって,ナマズ目のブラウンブルヘッド(Brown bullhead)に高い電気感受性が発見されたころから始まります(浅野,1985).その後,1931年には,畑井ら(1932a, b)によってナマズの行動と地震との関係およびパルス状の地電流変化との関係が指摘されました.さらに,1976年~1991年までの16年間,東京都水産試験場によってナマズの定量的な観察が行われ地震との関係が評価されました(東京都防災会議地震部会,1980-1992).その間,Asano and Hanyu(1986)によって,生物学的な観点からナマズの電気感覚についての研究が行われ,ナマズが1~30Hzの電位変動によく反応し,0.05μV/cmの閾値を有し保身に不可欠な情報, 餌や外敵の存在を示す情報を電気的な形で捉えていることが示されました.そして,藤縄・高橋(1994)によって1992年2月2日に三浦半島沖で発生した地震(M=5.9)の直前の東京都水産試験場のナマズの行動量と茨城県波崎における地中電界変動のULF帯(0.01~0.7Hz)の異常パルス数の顕著な関係性が指摘されました.