ロシアで開発されたM8アルゴリズムについて

M8アルゴリズムとは?

 ロシアは旧ソビエト時代から地震活動度の理論的・数学的解析に多くのノウハウを持
っており、そのための専門の研究所が存在します(Institute of Earthquake
Prediction Theory and Mathematical Geophysics, Russian Academy of Sciences)。
  M8アルゴリズムはそのロシア科学アカデミーのV. Keilis-borok教授(その後UC
LA教授:2013年に92歳で現役教授のまま他界)らのグループにより開発されたM8ク
ラスの地震発生を5年程度の中期予測を行なうアルゴリズムです。

  このアルゴリズムに興味を持たれた方はぜひ以下のウエブサイトをご訪問ください。
http://www.mitp.ru/en/

  なおこのM8アルゴリズムの日本での窓口は東海大学となっております。


M8はどのようなデータを用いているのか?

 M8ではアメリカが地下核実験探知のために世界中に展開している地震観測網からの地震デ
ータ(地震がいつ、どこで、どれくらいの大きさの地震が発生したかのリスト、これを地震カタログ
と言います)を用いて以下の〇で示した地域で解析を行っています。




  M8で警報(Times of Increased Probability of strong EQs: Tips)は次のような基準がある閾
値を超えた場合に発令されます。
  1)絶対的な地震活動度
  2)上記地震活動度のゆらぎ
  3)ある程度規模の大きな地震の空間的集中度
  4)過去1年間の主要な地震の余震活動の激しさ

   上記を考慮し、半年に一度ずつ全世界の予測を更新しています。以下の2004年7月の例
では、日本(首都圏近傍)に異常がでていたという事を示しています。そして赤く示した領域はも
う一つのアルゴリズムを用いて、領域の中でどこか一番可能性が高いかを示しています。

 ちなみにこの予測は”空振り”という結果になりました。M8アルゴリズムの外部の第三者機関
での評価結果は約60%の予知率という結果が出ています。




 
 下の図は、過去25年間の西太平洋地域全域に関する予測です。1985年から2011年までの
結果を示しています。この期間下記の領域ではマグニチュード8クラスが6個、マグニチュード9
が1個の合計7個発生しています。これまでのM8アルゴリズムでの重要な結果は、空振り(いわ
ゆる狼少年、下の図で予測失敗となっているもの)があっても見逃しがほとんど無い点と考えて
います。





東日本大震災の時はどうだったのか?



  予測を出してから、この場合は5年2ヶ月後に発生したので、厳密な意味では予知失敗とな
りますが、5年というのは研究者が自ら決めたルールであり、完全な成功ではないものの、かなり
うまくいった予測ではないかと我々は判断しています。